中平龍二郎氏(武揚堂OB) 「地図で楽しむ一人旅」

第6回 大山街道のガイド作成(その4)

大山街道の資料は色々収集していたが、より詳細に解説するためには全線にわたって調査する必要があった。街道を何時、何処からでも歩いていただくためには、上り・下りの両方向から歩く、また、四季を通して歩くことなどが必要であった。

 

そして、現地調査の方法については次のルールを作った。現地調査の一度目には地形図を見ながら地形を確認して歩く、二度目は神社・寺院・石造物・遺構・などを調べる。
特に、神社・寺院・道祖神・庚申塔などは由緒書(説明文)を記録する。
三度目は交差点名をはじめランドマークを調べ、写真はその都度撮影する。最終調査は総括として街道のポイントから外側に500m程度歩いて調査した。
私は街道を少し離れた距離から観察することは重要であると考えている。

 

このような順で現地調査を行ったが、結果的に一区間を最低でも5回以上歩くことになった。歩く回数が増えるに従い、このマイナーな道路が好きになった。
全線ではないが東海道や中山道も歩いてみたが、メジャーな街道のためか遊歩道・観光施設・休憩所などに手を掛け過ぎている。生活臭が感じられない。
大山街道は田舎臭い道路であるが、随所に生活道路としての活気が残されている。

 

原稿作成では歴史的な説明が多くなったが、この本の趣旨は大山街道を歩くためにあるから、地形や地名の解説をつけながら道路の説明に改めた。歴史上、詳細な説明は補注に移した。
道路の案内は文章の表現も大切であるが、地図で示すことが肝要である。
また、文章と地図を補うためには臨場感がある写真が必要となる。街道全線に地図をつけ、国土地理院の1万分の1地形図と、その未発行地域には自治体の1万分の1地形図を当てた。私の経験では地形図で道路を歩く場合、縮尺1万分の1が最適である。
図上の1cmが実際の距離の100mに該当するから計算し易い。

 

印刷は原価低減のため1色刷りに決定した。
多色刷りを単色に変えると道路・河川・等高線・植生界などが重なり、地図が判読しにくくなる。
ただ今回は街道を歩くことが目的であるから、ウオ−キングマップをテーマ(主題)にすればよい。そこで、地形図そのものをウオ−キングマップの背景として薄墨色で使用することにした。但し、地図を判読できる濃度を保つことが前提条件となる。
最優先する必要がある大山街道に太い墨色実線を採用し、消滅したが迅速測図に記載されている街道のルートを墨色点線で表示した。
また、区間によっては長期間にわたり出水などのため通行不能になり、そのため暫定的な迂回道路や抜け道があり墨色破線で表示した。
街道から少し中に入れば見所に行ける場合は、街道からの連絡道路を細い墨色実線で表示した。

 

著書「ホントに歩く大山街道」を手にする中平氏


さらに街道にはポイントを設定し区間距離をメートル単位で明示した。
ポイントは交差点・鉄道の駅・見所などを基準にし、歩行中の目安を把握できるようにした。
なお、参考までに記すと万歩計の歩幅は成人男性が約70cm、女性が約60cmである。

 

大山街道は東京だけでも4つの谷があり、神奈川県は多摩丘陵・相模台地など17回ほどアップダウンを繰返すため坂が多い。中には目黒の大坂、宮前区の八幡坂・小台坂、都筑区のうとう坂、伊勢原の屁っぴり坂など難所が多かった。
従って、坂はぜひとも表示する必要を感じていた。私の体験から言うと坂は現在地を確認するのに極めて役立つ。
地図は連続して記載するのがベターであるが、ガイドと連動させるため間隔が開く場合が多いので、隣接ページを表示した。

 

本の構成は赤阪御門〜大山山頂までを13区間に分けた。1区間が約6kmに設定し楽しみながらゆっくり歩けるようにした。
ガイドは大山街道を迷わず歩けるためルート誘導に力を入れ、交差点や目標物の写真を索引番号付きで記載した。この番号は地図とも連動させた。
街道の本であるから沿道の神社・寺院・石仏・道標・庚申塔・馬頭観音・老舗や地形の説明を簡明に記した。同時に昔の村名・地名・生業などの説明も付け加えた。
また、本文中で説明すると煩雑になる地図の話、伊能忠敬・渡辺崋山、多摩川などはコラムを設けて解説した。

 

(注)大山街道の詳細はこちら